個性の時代?(世界にひとつだけの花)

以前,スペースシャトルに乗った野口飛行士が,
シャトル内で「世界にひとつだけの花」という歌を
聴いたという話は有名である.
 
私もこの歌を聴いたことがある.いい歌だと思う.
 
「ナンバーワンにならなくてもいい」
「世界でひとつのオンリーワン」
 
熾烈な競争社会におけるひとつの「癒し」であろう.
 
「競争しない」
「人をありのまま尊重する」
 
社会に対する切なる願いである.
しかし,こんな条件をそのまま実現することは
不可能であることは誰の目にも明らかであり,
そう考えると,空しくて悲しくなったりする.
 
若い学生はすばらしい.
穢れ少なく,輝いている者が多い.
まさに「世界にひとつだけの花」を体現しようと
しているかに見える.
 

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各種メディアも,最近やたらと「個性重視」を
叫んでいる.しかし,なんとなく胡散臭い.
なぜなら,「特別な能力」とか「秀でた能力」
のことを「個性」という言葉で読み替えている
ような気がするからである.
 
そもそも「個性」が皆にあるのは当たり前である.
顔も違う,声も違う,体格も違う,好みも違う,
性格も違う.....
それが本当の「個性」だと思う.
 
メディアから流れてくる「個性的であれ」という
掛け声は実は,
「有能であれ」,「勤勉であれ」,「アイデアを出せ」
と言っているのに等しい.
 
学生たちよがんばれ! 大人たちの嘘に惑わされるな!
「選択の自由」を標榜して決断から逃げ回っていては,
後でとりかえしのつかないことになる.
苦しみに耐え,知恵と力を身につけろ!
 

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宇宙であの平和な歌を聴いた野口飛行士は
東京大学の大学院出身である.
これが何を意味するか,考えてみよう.