大学教授になる方法(書評)

「名誉,高給,ゆとり,無責任」
多くの人が,大学教授という職業に対して
持っているイメージ.
 
私もそういうイメージを持っていた.
今から10年以上前,鷲田小彌太先生の
「大学教授になる方法」という本を書店で立ち読みした.
当時はこの職業に対する揶揄の気持ちが手伝って,
立ち読みしながら笑ってしまったものだ.
 
そもそも大学教授という職業は当時の自分の現実から遠すぎて,
その実態がわからなかった.
 
私の場合は,情報工学の研究を職業にしたくて,
道を探した結果,大学の教員という職業に着くことになった.
高校生くらいの時は想像もしていなかったことだ.
 
そもそも大学の教員の職責は「教育」と「研究」である.
しかも,その職業人口は意外に多い.
従って,「研究者志望→大学教員」という図式が
成立して,結果的に自分もその道に進むことになった
という感じである.
 
この「大学教授になる方法」という本であるが,
自分が大学教員になった経緯と合わせて
今回よく読んでみると,いろいろなことが学べた.
(というか再認識できた.)
 
その本にも書いてあるが,まず,大学教員の職業人口が
意外に多く,高等学校の教員のポストの数を上回っている
ということがある.
ここからして,大学の教員というものが,決して雲の上のもの
ではなく,「普通に狙える」大衆の職業といえる.
 
大学教授でも「名誉」といえるのは,
非常に偏差値の高い一部の大学の教授だけだと思うし,
「高給」に関しても,一部の大学にしか当てはまらない.
会社勤めでうまくいっている友人に比べると,
私の給与は安い.
 
あと,「ゆとり」と「無責任」は,その人によると思う.
まじめに勤める教員にとっては,なかなかゆとりと無責任
とは縁が薄い.ただ,この本にもあるが,これからは大学の
教員の品質が問われはじめるので,ゆとりと無責任を追求する
人は極めてやりづらくなると思われる.
 
 
結論として,大学教員に向いた人というのは,
 
1) 研究したい学術分野がある
2) ものを教えるのが好きである
3) 経済的豊かさにはあまり興味がない
 
という3点を満たした人ではないかと思う.
だから,一般的な意味では大学の教員は
決して優良なる職業とは言えない。
 
この本は,大学の教員になるための指南書として
読むととても役に立つ。
内容は、書名から想像される「いんちき」、「裏手口」
といったイメージからは程遠い。結構、堅実なことが
書いてあり、内容に偽りは無いのではないか。
(幾分、現状の悪い面の暴露が書いてあるが....)
 
気軽に「大学の先生でもやってみるか〜」では
大学教員にはなれないが、
真剣に研究活動する人にとっては必ず手に入るポスト
だと思う。
 

                                                  • -

 
○ 大学教授になる方法
   鷲田小彌太 著 ISBN4-7872-3037-9
○ 大学教授になる方法 実践編
   鷲田小彌太 著 ISBN: 4787230492
○ 新 大学教授になる方法
   鷲田小彌太 著 ISBN: 447878292X